[新刊・話題書]国際秩序  細谷 雄一  中公新書

現在の国際社会は、外交面で非常に難しいかじ取りを求められていることは言うまでもない。これはどの国も同じであろう。しかし、こうした難しさは今に始まった話ではない。では、先人たちはどのような考え方や工夫をしてきたのかということを解き明かしているのが本書である。


筆者によれば、国際秩序には三つのパターン(本書では「原理」と呼ぶ)があるという。

・均衡:主要国が特に軍事面で均衡を保っているようなパターン。もちろん、複数国との同盟を通じて結果的にパワーバランスを保つようなケースもある

・協調:主要国が共通利益を実現するために友好的な関係を築くパターン。そこには、当事者国の間に共通の価値観がなければならない

・共同体:国という枠を超えて、市民が一つの共同体の一員となるようなパターン

これを、近代西洋における国際関係史をもとに見ていくのが本書の中心となる。

具体的には、18世紀の初めに起ったスペイン王位継承戦争から始まり、フランス革命およびナポレオン戦役、ドイツ帝国の誕生とビスマルク、第一次世界大戦までを振り返る(もちろんこの後の歴史についても概観しているが、メインはこちらの方だろう)。

このうち、「均衡の原理」に基づいた秩序が形成されたのはスペイン王位継承戦争後とドイツ帝国誕生後であり、「協調の原理」に基づいた秩序が形成されたのはナポレオン戦役後(いわゆるウィーン体制)であるとしている。

そして、二度の世界大戦後は冷戦という「均衡の原理」を経て、正直こうした原理に該当しない混乱期に至っているということになるのだろう。こうした整理の仕方は非常にわかりやすい。


しかし、同時に違和感を覚えるところもある。

一つは、秩序のパターンに「共同体の原理」があげられているが、現実の国際社会で実現したことがないという点だ。こうした歴史上登場していない理念的な原理を国際秩序のパターンの一つとしてあげる、というところに、筆者の恣意性が感じられるつまり、均衡→協調→共同体という流れがあると想定しているように感じる。


上記に関連することとして、「協調の原理」に対する評価がすこぶる高いことも違和感が残る。歴史を紐解くと協調の原理が実現したのはウィーン体制の時だけであり、これは様々な条件がうまくあてはまって実現したものととらえることもできる。こうした偶然の産物かもしれないものを追い求めるのは、やや現実感に欠けるようにも思える。


そして、これは筆者のバックグラウンド上仕方ない話ではあるが、国際秩序の成り立つ場が「同じような国力を有する国の間での秩序」に限定されている点にも違和感が残る。世界でこのようなパワーバランスが成立している地域は、歴史上かなり限られる。私たちの住む東アジアなど、中国という大国とその他小国という構成でも、まあ立派に?秩序を保ってきた。こうしたパターンの考察もできれば加えて欲しかった。本書の最後で、現代の米中関係について触れているが、こうした問題は東アジアで歴史上成立してきた秩序も念頭に置くべきだと感じる。


こうした筆者の「思い」が強く見られる内容ではあるが、「外交」という観点から見れば的確な指摘が多く、参考になる一冊だった。

ついでにもう一つだけ書き添えると、民主党政権の初代首相のとった外交政策がどこまでも頓珍漢だったのだ、ということを、本書は国際秩序という点からわかりやすく説明してくれている。

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