[新刊・話題書]独立国家のつくりかた  坂口 恭平  講談社現代新書

挑発的かつ刺激的な一冊。
ただ、その主張や考え方にはまったく共感も同意もしない。


単純に言ってしまえば、著者の生き方探しを周囲を巻き込みながらやっている、その半生記を描いたものだ。書名にある独立国家も、自分の生き方探しの一つの姿にすぎない。

著者の生き方はどのようなものか。著者から言えば「社会を変える」ということになるのだろう。しかし、具体的な内容を見てみると、かなり近視眼的かつ著者の嗜好が前面に出たものとなっている。

たとえば、著者がヒントを得たというホームレスの生き方、つまり生活費をほとんど払わないで生活が可能なスタイル、というのも、聞こえはいいが、結局のところ生活費を払わずに入手している、ブルーシートや居酒屋の残飯は自然と湧いて出るものではなく、それを生産しているという視点が欠けている。こういう視点があれば、生活費を払わないスタイルというのは、単なる寄生虫的な生き方に過ぎないとも見える。

また、著者は「顔の見えない貨幣を通じた交換」を否定している。それはそれで美しい主張ではある。そして、その代替策として、「顔の見えるもの同士での贈与や交易」をあげているが、これも私たちの身の周りにある商品すべてで行うのは現実離れしている(だから貨幣が存在するわけであるが)。

他にもいろいろあるが(忘れた)、結局のところ自分にとって都合のよい生き方をする、というのが本線にあるような気がする。それを「生きる力」と言ってしまうのは、あまりにご都合主義的ではないか、というのが本書での表現している「生理的に違和感を覚える」部分なのだろう。


もちろん、こうした動きを支持する人は多いだろうし、そうした動きもあると本書ではある。こうした動きは、社会全体の生態系を考えれば健全かもしれない。ただ、こうした動きがある、というレベルでとどまるのは、また社会全体の生態系を考えると必要にも思える。


著者は筋金入りの自分探しの達人だ。なんといっても、小学生時代から始まり、大学生、大学卒業後もずっと自分の生き方探しをしながら生きているのだから。だから、本書の記述には腰の据わったものを感じる。ただ、それは彼の生き方、考え方、態度に共鳴する必要はない。自分なりの生き方を探していけばよいのだから。


なお、著者は土地私有に違和感があると再三指摘しているが、正直この部分はピントがずれていると感じざるを得ない。仮に私有地をなくして、個々が自由に土地を使える(となると、使用権というのは発生するのだろうか)とした場合、どんな事態が発生するか。それをイメージしない限り、著者の「本来自分のものではない土地を私有するのはおかしい」という主張は、単なるきれいごとを並べているだけになる。

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